いだきしん熊野本宮大社大斎原コンサート
「開闢の光景」

 

幾重にも連なる山を越えると、緑の光輝く大河 熊野川が目前に広がる。ここは熊野の地。熊野川に沿って行くと、明るい光に導かれる様に辿り着く大斎原。 天にそびえ立つ様に堂々と凛とした日本一の大鳥居。現代の夢。大鳥居をくぐり、森の中に入ると、聖地大斎原のエネルギーに包まれる。神のふるさと。天に通ずる地。

昔、末法の世にあり、人々は幾重にも重なる山並みのはるか向こうにある熊野の地を常世の国、黄泉の国とし、蘇りを求めて熊野詣でをしたと云う。現代も、日本人の魂を失くし、荒れ果ててしまった日本は、末法の世と感じ、日本人の魂を取り戻し、蘇りを求め、7月19日 いだきしんコンサート開催を企画。 浄も不浄も、女も男も、あらゆる宗教も受け容れる聖地。昔人々は、聖地に行き、自らの生き方を見直したとも聞く。悪い事があったら自分の生き方を正し、日本人は常に身を清め、心を清めて生きてきたと聞く。受容、癒し、蘇生の聖地、熊野にての いだきしんコンサート。何が起こるのか胸のときめきは高まり、緊張しながらも、日々身を清め、内面清め、やる事を全て成し、熊野に向かう。

前日予感し懸念していた通りの大雨となり、大雨をものともせずに、大きなうねりを上げ、悠々と流れる熊野川の勇ましい風情に勇気づけられ、大斎原に向かう。どしゃ降りの大雨の中、ビニールテントのかかった舞台には、世界一のベーゼンドルファーインペリアル(97鍵)ピアノが堂々と備えられ、シンセサイザーも並ぶ。会場の制作スタッフの只々ひたむきに準備する姿は、日本人の素晴らしさを語る。リハーサルが始まり、大雨の中鳴り響くピアノの音は、大斎原の森全体に響き、この世のものとは思われぬ別次元の音。人間の悲しみも苦労も切なさも、全て吸収し、天に運んでいく音。

叩きつける様に激しく降る雨は、私に何を訴えているのかと、天に問う。天へ真っ直ぐ通ずる光がはっきりと見える。同時に、地には人間の疑惑の思いが渦巻いている。熊野は、誰をも受け容れるが、邪な思いで行うと祟りがあると聞いた。大斎原での催しは、必ず晴れるとも聞いた。雨が降ると心が曇っていることになるというこの地に生きる人々の思いが黒い影になって見えたのだ。私は、天に祈る時、天気は関係ないというメッセージを受ける。晴れれば良し、雨は困るというのは人間の都合であって、大自然は人間の都合により動かされる事はないのは、重々承知している。「天気になって下さい」とは、天に対し祈る事は傲慢と感じ、祈れない。森の中で聞くピアノの音は、天から降り注ぐ。木々が一斉に語りはじめ、異次元空間を経験する。このひととき、雨が降ろうが降るまいが関係ないとはっきりわかる。

7月19日コンサート当日、更に激しく降る雨と雷と嵐の中、熊野本宮大社にてお祓いを受ける。あらゆるエネルギーが集まったかの様に吹き荒れる風雨。リハーサルの音と共に、疑惑の思いで黒くなっている陰りは徐々に消えていった。まもなく全部消える事がわかり、私は天に任せ、コンサートに臨む。コンサート開演2時間前、ぽっかりと一部分だけが青空となっていた。疑惑は晴れたと、天に感謝。

雨が上がり、ビニールカバーを取り、コンサートが始まる。第一音のピアノの音は、祝福の音と感じ、涙がこみ上げる。今までの事を全部受け容れられ、心が洗い清められる。舞台四隅に焚かれた松明の炎と音楽により、遠い昔古代の光景が思い浮かぶ。ピアノの音と共に、太鼓、笛、三味線の音が流れ、古代の神を祭る光景となる。神を呼ぶピアノの音に神経を集中させ、神を待つ緊張のひととき。やがて、森の交響楽が聞こえ始め、私は矢も楯もたまらず森の中に入る。山の神、森の神と出会い、嗚咽をこらえ、全身が震える程感動的な瞬間を迎える。天が与えて下さったエネルギー。私は強くなれる、そして世界に出ていけると直観し、只々「ありがとう」と言い、感謝で一杯。熊野詣での途中で行き倒れた人々の魂が集まり、やはり「ありがとう」という魂の声が聞こえる。生命賭けで熊野に向かった人々と共に、今蘇りの時を迎える。鬼にされてしまった気が一斉に集まり、赤や青の光と共に現れては消えながら、大斎原は気に満ちる。そうして生まれた静かなピアノの音は、赤子の声と聞こえる。これが、「開闢の光景」。自然の神、気、人間の祈り。全てがひとつとなる光景に、赤子が生まれる。そして、その声とエネルギーは、世界に伝播したその時、コンサートは終了。体ごと拍手せずにはいられない。感動と喜び。この瞬間に居合わせる全ての人が恋しい。愛。

ここに表現された「開闢の光景」は、やがて現実に顕れる。内面で起こった事が社会現象になるまでの年月の長さを少しでも縮めたい、早くしたい気持ちは、より一層全身全霊で働く意欲にあふれ、行動に表れる。「開闢の光景」からタンザニアコンサート「平和の灯火」へ。全身全霊覚醒の瞬間である赤子の産声が、タンザニアコンサートにて表現された時、平和な未来に通ずる。

「開闢の光景」から平和な未来へと創り出す いだきしんコンサート開催に向け、全てを尽くす事を誓う。

平成15年7月22日

高麗恵子